ごあいさつ

昨年の秋、一人で自分の部屋を掃除しながら、「友達がほしい」と泣いた夕方がありました。

既存のサイクルで演劇公演を打つことに疲れてしまい、いいへんじでの活動をしばらくお休みしていたものの、演劇をする場所がないならないで、唯一の遊び場が奪われてしまった気がして、演劇をする以外に友達と友達でいる方法がわからなくて、寂しくて情けなくて、二十五にもなって「友達がほしい」と泣きました。

お恥ずかしい話です。

では、いざまた演劇公演を打とう、となったらなったで、団体主宰・劇作家・演出家として権力を持つ立場である自分が、みんなと「対等な関係でありたい」などと願ってしまうことは、すごく暴力的なことなのではないか、という問いも新たに生まれました。

そんなこんなで勝手に一人でがんじがらめになって、踏み出すまでにすごく時間がかかってしまいました。でもやっぱり、やってみないことには何もわからないし何も変わらない、それならとことんやってみよう、というところに結局は落ち着きました。

（そういうなんかめっちゃシンプルな自分もいるんですよね。）

「友達」についての演劇を「友達」と一緒につくります。

一人の人間として無視できなかった感情と、一人の団体主宰・劇作家・演出家として無視できなかった問い。一人では考えられないことだから、みなさんとたくさん話をして、向き合いたいと思っています。

いまは、できるだけ小さな物語の中へ、狭く深く潜りたい。

普段は見て見ぬふりをしてしまう、心の柔らかいところに触れる瞬間をつくりたい。でもそれって、安心だと思える場所だからこそできることだと思うから、どうやったら、全員にとってそういう場所をつくることができるのかも考えたい。

この春、（また）一緒に遊びませんか。

北区、ちょっと遠いかもしれませんが。

作・演出・出演　中島梓織

next